群馬県吾妻郡長野原町、嬬恋村にかかる浅間山北麓。このあたりは、過去3度起きた浅間山の大きな噴火により形成された特徴ある地層・岩石・地形・植生など貴重な自然遺産があるエリアで、2016年に「浅間山北麓ジオパーク」に認定されています。
今回ご紹介する浅間山北麓ビジターセンターではこの自然遺産について詳しく学べる他、浅間山の噴火の歴史や動植物などについても学ぶことができます。施設内にある自然遊歩道はハイキングやトレッキング、野鳥観察などを楽しむ方にも人気のスポットです。
浅間山噴火のことが学べる 浅間山北麓ビジターセンター
浅間山北麓ビジターセンターは、浅間山火口から4キロという浅間山北麓の中でも浅間山に一番近い施設です。
施設の入口では、周辺の森に生息するイヌワシやフクロウ、カモシカやキツネなど動物たちの剥製がお出迎えしてくれます。館内には浅間山の噴火の歴史を学べるジオラマや写真が展示されており、数百万年前から近年に至るまで、噴火によってどのように地形が変わってきたかを知ることができます。施設中央にある噴火口のジオラマでは、火口内部の様子や昭和25年の噴火で噴出した千トン岩の位置も分かりやすく表示されています。千トン岩は遊歩道内にある見晴台からも実際に肉眼で見ることができるので、ぜひ見つけてみてください。
また約240年前の天明噴火から現在までの植生の変化がジオラマで再現されており、溶岩流に覆われ岩だけとなってしまった地形から、緑に覆われた現在に至るまでの植物の復活の様子が学べます。ジオラマを観ながらガイドさんのお話を聞くことで、より詳しく学ぶことができます。
その他、ジオパークガイドさんによる自作の標本が展示されており、ミヤマモンキチョウ、アサギマダラなど浅間山北麓で見られる蝶を観察できます。また岩石展示コーナーでは、浅間山から噴出した岩石や浅間山の周囲に見られる岩石、また国内の珍しい岩石などが展示されており、実際に触れることができます。岩石に含まれている鉱物やその特性を学んだり、マグマが冷え固まったものや小石や砂が堆積して固まったものなど様々な岩石のでき方についてもじっくり学ぶことができます。浅間山の噴火の歴史と共に、地球の働きでできた岩石の歴史にも想いを馳せるとなんだかロマンがありますね。
その他館内には、クラシックバイクが展示されています。これは日本のオートバイ産業の育成を目的に開催された「浅間火山レース」(1955〜1959年)を記念したもので、当時の様子がわかる写真やポスターと一緒に展示されています。2021年4月にビジターセンターから4.5km離れた浅間牧場売店内の「浅間記念館」に移転するまではこの施設がバイクの展示館(旧浅間記念館)となっており、多くのバイクファンが訪れていました。
特別天然記念物「溶岩樹型」が数百個!浅間山噴火の遺産を巡る スカイロックトレイル
浅間山北麓ビジターセンターを出発点とするトレッキングコース「スカイロックトレイル」は、過去の噴火によってできた溶岩流や火砕流の中を歩くことができるおすすめのコースです。
天明の大噴火で有名な鬼押出し溶岩(1783年)や平安時代の上の舞台溶岩(1103年)、古墳時代の下の舞台溶岩(3世紀頃)と様々な溶岩地形をガイドさんに案内していただけます。火口から飛び出した噴石が衝突してできたクレーターや、真夏でも冷気の吹き出す風穴など見どころを案内してもらうことができ、活火山の鼓動を追体験することができます。
その中でも特に「溶岩樹型」は必見です。天明噴火時に流れ出した吾妻火砕流と森の様子が伺える貴重な自然遺産で、溶岩流ではなく火砕流によってできたことが特徴です。森林に流れ込んだ火砕流により、立ったまま火砕流に埋もれた樹木がその後焼失し、その部分が穴となって溶岩(火砕流)の樹形として形成されました。世界的に見ても珍しい現象のため国の特別天然記念物に指定されています。※スカイロックトレイルは完全予約制です。
森林散策、野鳥観察もおすすめ
ビジターセンター内の自然遊歩道を楽しく歩いてもらおうと、スタッフさんが「週刊遊歩道」というガイドマップを毎週発行しています。その週ごとに楽しむことができる高山植物や野鳥などが詳しく掲載されており、このガイドマップを目当てに毎週散策に訪れる方もいるそうです。施設に行ったらぜひお手にとってみてください。
スタッフさんの手が空いていれば、自然遊歩道を歩きながら風景や植物、野鳥などのガイドも無料でしてもらえるそうです。遊歩道を案内してもらいながら、浅間山に生息する生き物たちに目を向け、自然の中を散策するのもおすすめです!
ビジターセンターで浅間山や、そこに暮らす動物や自生する植物について学んでから散策に出かけると楽しみの幅も広がります。ぜひ浅間山北麓にお越しの際は立ち寄ってみてください!