江戸時代に北国街道と中山道の分岐点として栄えた軽井沢追分宿。中軽井沢駅から車で10分ほどのところにあり、かつての宿場町の雰囲気を残す素敵なエリアです。
軽井沢最古の木造建築と言われている浅間神社や追分宿郷土館、日本を代表する小説家の堀辰雄の記念館など、追分宿の歴史や文化に触れることができる他、お蕎麦屋さんやカフェ、骨董品店や雑貨屋さんもあるので、昔の街並みを見ながら一日ゆっくりと散策を楽しむことができます。今回はそんな追分宿にある曹洞宗のお寺「浅間山泉洞寺」を紹介します。
檀家さんの寄進と住職のアイデアで建てられた ゆかいなお地蔵様たち
今から約410年前の慶長3年、泉洞寺は上州常林寺心庵宗祥禅師によって開かれました。元々「仙洞寺」という寺名でしたが、江戸時代に起こった火災を機に、様々な厄災を除き、水を持って寺を守るよう祈願を込めて「泉洞寺」と改名したそうです。お寺には御本尊の聖観世音菩薩が祀られているほか、作家の堀辰雄の愛した石仏や、書家の稲垣黄鶴の筆塚などがあります。堀辰雄が朝夕の散歩の際に必ずお参りしていたとされる石仏「歯痛地蔵」は「樹下」という作品で登場します。なだらかな曲線が美しいお地蔵様で、半跏し手を頬に当てている姿が痛めた歯を押さえているように見えることから「歯痛地蔵」と呼ばれるようになったそうです。子どもが歯を痛めると、ここに連れてきて拝んでいった親子がいたという言い伝えもあるそうです。
そして、この泉洞寺には訪れた人を笑顔にしてくれるユニークなお地蔵様がいます。
ひと際目を引く、軽井沢でなじみ深いスポーツ「カーリング」。そのストーンの上に鎮座する氷環地蔵(通称カーリング地蔵)。このお地蔵様を作ったきっかけは1998年の長野オリンピックだったそうです。「カーリングが正式種目になった際、当時の軽井沢町長さんが『軽井沢をカーリングの聖地に』と話していたことを聞き、カーリングにちなんだお参りができる場所を作り軽井沢の地域おこしができればいいなと考えたんです。」と櫻井住職。メガネ姿にカーリングブラシを持ち、一点を見つめる表情のお地蔵様を見ていると、ストーンを投げる前の選手のように目の前のことに集中し落ち着いた気持ちになれるような気がします。2022年の北京オリンピックで日本チーム「ロコソラーレ」が銀メダルを獲る活躍などカーリングブームの再到来を予感させます。御代田のカーリングホールや風越カーリング場からも近いので観光客のみならずカーリングのチームの方がお参りに来ることもあるそうで、もしかしたら今後ロコソラーレが訪れることもあるかもしれませんね!
さらに、全国で泉洞寺にしかないと言われている「卓球地蔵」は住職のご趣味で作られたそうです。左右の手でペンホルダーとシェイクフォルダーとラケットの握り方も違い、細部にこだわって作られているのでぜひじっくり見てみてくださいね。住職は卓球が大好きということで、毎年「泉洞寺杯卓球大会」という大会も開催しているようです。そこでは県内外から大勢参加者が集まり、卓球を通じた人との繋がりや場づくりにも貢献されています。
二人のお地蔵様が仲良く頬を寄せている「縁結び地蔵尊」は、ここで良縁に結ばれることを願って建てられたそうです。新緑や紅葉がきれいな時期に合わせてお地蔵さんと一緒に、結婚式の前撮り写真撮影に来られる若いカップルがいたり、家族の皆さんで記念撮影をされる方がいたりするなど、人気の撮影スポットにもなっています。
その他に、学校の先生に見立てた優しい表情のお勉強地蔵、ぷっくりお腹の出た酒飲み地蔵など魅力的な愛らしいお地蔵様がたくさんおり「お子さんがお地蔵様を楽しんで探せるようなものを建てられてたら」と泉洞寺檀家さんの寄進とご住職のアイデアで
次々と建てられているのだそう。現在、次なる構想もあるそうなので新しいお地蔵様が登場する日も近そうです。
境内は、つつじや紅葉などの草木も美しく、四季折々の自然を楽しめるので参拝しながら散策もおすすめです。
泉洞寺では小学校の夏休みに合わせて座禅会やラジオ体操を行ったり、写経会やコンサートも開催されたりするそうです。軽井沢に訪れる方々が参加されているとのこと。また、2022年になってから新たにカーリング地蔵、卓球地蔵の御朱印ができ、御本尊の聖観世音菩薩と三仏の見開きのものと合わせて全部で4種類になったそうです。泉洞寺ならではのこだわりの御朱印をいただくのも楽しみですね。
ここでしか会えないお地蔵様や御朱印をいただきに追分宿 浅間山泉洞寺を訪れてみてはいかがでしょうか。